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やっぱり私は、Paul Chambers!」

 日本で一番有名なジャズベースプレイヤーと言えば、多分、Ron  Carterだと思う。その昔、洋服のCMにも出ていた。横断歩道をかっこよくスーツを着こなして、さっそうとベースとともに歩いていく、そんな場面があったように記憶している。

ジャズクラブで演奏しているとよく「好きなベーシストは誰ですか?」と聞かれるけど、多分多くの方は私が「ロン・カーターです」と答えると思っている(ように感じる)。

私が「・・・と・・・と・・・なんかが好きです」っていうと、「ロン・カーターは?」って聞かれる。それくらい有名だ。というか、彼しか名前を知られているベーシストがいない、とも言える。

正直に言いましょう!私はあまりロン・カーターは聴きません・・・。

でも、ほんとに素晴らしいレジェンドです。60年代のMiles Davisのレコーディングのなんて、驚愕としかいいようがない。

少々、音色が好みではないのであまり聴かないというだけです。

ジャズベースを習い始めた頃によく聴いていたのはRay Brownだった。一番最初にハマったベーシスト。教則本も出していて、最初にそれで練習した。

ピアニスト、オスカー・ピーターソンのトリオでの活躍がおそらく一番有名だと思う。私もオスカー・ピーターソンTrioの演奏はよく聴きました。まだ聴いたことのない方は「We Get Requests」を聴かれるといいと思います。これは名盤と思う。

 

その後、色々なレコードを聴くようになって、かっこいいベーシストをたくさん聴くようになるのだけど、一番好きな人は?と聞かれると、やっぱり私は、Paul Chambers!

ポール・チェンバースは50年代~60年代にかけて活躍(という言葉ではおさまりきらない)、ジャズにはなくてはならないベースプレイヤーだ。

この人は若くして亡くなり(34歳)、活動自体は長くない。でも恐ろしい数のレコーディングを残している。

私が最初に聴いたアルバムは、ピアニスト、Wynton Kellyの「Wynton Kelly!」だった。曲をコピーしていくうちにどんどんハマり、誰と一緒に演奏しているのかを調べ、次々に聴いていった。

 

たぶん有名なのは、Miles Davisのバンドでの演奏だと思う。

ジャズを聴き始めて間もない頃、Wynton Kellyのレコーディングの「枯葉」という曲のベースラインをコピーしていた。

ポール・チェンバースのラインはわかりやすく、そして、同じフレーズが何回も出てくる。けっこう間違ってる箇所もある。

ベースを始めたての私には心強い演奏だった。

だって、同じ事を何回も弾いても、また、簡単な音を弾いても多少は間違っても、ちゃんと演奏は成立するし、かっこいい。

「なーんだ、いいんだこれで。私にも出来るかも♪」

だがしかし、そんなに簡単な話ではなかったです・・・

彼のベースがかっこいいのは、彼の「歌」「タイム感」が素晴らしいからなのです。

しかも。この一連のすごい演奏の時には彼はまだ20代前半という若さ!

マイルスも「若いが、なぜだかわからないが演奏は素晴らしい」みたいな事を言っていたとどこかで読んだ事があります。

 

ベースを弾いていて、難しいなぁ、と思う事は、「間」の取り方。あとは「タイム」。

音楽って流れを「キープ」してればいい、というもんでもない、という事がわかりかけてきた頃から(はじめのうちは「キープ」さえも難しいのです)、ますますポールの演奏は素晴らしいと感じるようになった。

もちろん他の偉大なベースプレイヤーの方々、みんなすごいです。

でも、何年もジャズを聴いてきて、鳥肌が立つほどすごい!と(私が)思う演奏のベースはPaul Chambersが弾いている。

これってすごいよなぁ。ビートの進み具合、タイム、音色、どれをとっても他とは違う。

リーダーアルバムは5枚だが、それ以外に、とにかくたくさん録音している。

何人ポール・チェンバースがいたのか、と思うぐらい。

結局彼は大量の飲酒、ドラッグが原因で亡くなっている。そうでもしなけりゃ、あんなに録音できないよなぁ・・・。

正気じゃ無理なほどのオーバーワークだったんだろうな。

10月末にアメリカで、ポール・チェンバースの伝記のような本が出版されるようで、とても楽しみにしている。英語だから、どこまで理解できるかわからないけど。どんな人だったのか、いまから読むのが楽しみです。

​(2012年10月)

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